姿勢改善や腰痛対策として、ピラティスやヨガを始める方が増えています。では、それぞれの効果は、研究データでどこまで確かめられているのでしょうか。
コクラン・レビューと、円背(猫背)を対象にした試験の結果を整理します。
ピラティスは腰痛に効くのか
ピラティスについては、非特異的な腰痛を対象に、10件のランダム化比較試験(510人)を統合したコクラン・レビューがあります(Yamato et al., 2015)。7件はバイアスのリスクが低く、3件は高いと評価されています。
何もしないなどの最小限の介入と比べると、ピラティスは短期(3か月未満)で痛みを軽減し(平均差 -14.05、100点満点、95%信頼区間 -18.91〜-9.19、低い質のエビデンス)、中期(3〜12か月)でも痛みが軽くなっていました(同 -10.54、-18.46〜-2.62、中程度の質)。機能障害も、短期(同 -7.95)、中期(同 -11.17)とも改善していました。
一方、他の運動と比べると、機能障害に有意な差はなく(短期 -3.29、中期 -0.91、中程度の質のエビデンス)、痛みについても結果が一貫していませんでした。著者らは、ピラティスは最小限の介入より有効な可能性がある一方、他の運動より優れているという確かな根拠はない、として、選択は本人や提供者の好み、費用で決めてよいと結論づけています。
ヨガは腰痛に効くのか
慢性の非特異的腰痛に対するヨガは、21件の試験(2,223人)を対象にした、2022年のコクラン・レビューがあります(Wieland et al., 2022)。参加者のほとんどは、40〜50代の女性でした。
運動をしない場合と比べると、3か月時点で、痛み(0〜100点、平均差 -4.53、中程度の質)と、腰に関する機能(ローランド・モリス質問票、24点満点で平均差 -1.69、低い質)の改善はありましたが、いずれも「臨床的に意味のある差」とされる基準(痛みで15点、機能で5点)には届きませんでした。背中の痛みが「改善した・解消した」と回答した人の割合は、ヨガ群のほうが高い結果でした(リスク比 2.33、低い質)。
他の背部の運動(理学療法など)と比べると、機能・痛みともに、ほとんど差がありませんでした。また、有害事象(おもに背中の痛みの増加)は、運動をしない場合と比べてヨガ群で多く(6〜12か月で1,000人あたり43件対9件、リスク比 4.76)、他の運動とはほぼ同程度でした。全試験で参加者と提供者の盲検化ができておらず、バイアスのリスクが高い点も指摘されています。

腰痛への運動を横並びで比べると:ピラティスは上位
ここまで見てきたように、ピラティスもヨガも、他の運動と直接比べると、はっきりした優劣はつきません。では、さまざまな運動を横並びで比べると、どう見えるのでしょうか。慢性の腰痛を対象に、運動の種類ごとの効果を比較した、118件の試験(9,710人)のネットワークメタ解析があります(Fernández-Rodríguez et al., 2022, JOSPT)。
結果として、何もしない対照群と比べて、ほとんどの種類の運動が、痛みと機能障害の改善に有効でした。例外は、痛みの軽減に対するストレッチ単独と、機能障害の軽減に対するマッケンジー法でした。痛みの軽減に最も有効だったのは、ピラティス、マインドボディ(ヨガなど)、コアベースの運動で、機能障害の軽減では、ピラティス、筋力運動、コアベースの運動が上位でした。順位を示す指標(SUCRA)では、ピラティスが、痛みで93%、機能障害で98%と、最も高い値でした。
著者らは、特に効果の大きかったプログラムの特徴として、週1〜2回以上のピラティスまたは筋力運動、1回60分未満のコアベース・筋力・マインドボディの運動、3〜9週間のピラティスやコアベースの運動を挙げています。
ただし、この順位は「最も効果的である確率」を示すもので、運動間の効果の差が、臨床的に大きいことを意味するわけではありません。先に見たコクラン・レビューで、ピラティスと他の運動の間に有意な差がなかったことも踏まえると、「ピラティスは上位に位置する運動の一つだが、他の運動を大きく上回るとまでは言えない」と受け止めるのが現実的です。
円背(猫背)には、ヨガは効くのか
腰痛ではなく、背中の丸み(後弯)そのものを対象にした試験もあります(Greendale et al., 2009, Journal of the American Geriatrics Society)。60歳以上で、後弯角が40度以上の男女118人を、1回1時間・週3回・24週間のヨガクラスに通う群と、月1回の昼食会とセミナー(対照群)に割り付けています。
対照群と比べて、フレキシカーブという測定法による後弯角が4.4%、後弯指数が5%改善しました(それぞれp=0.006、p=0.004)。しかし、別の測定法(デブルンナー式の傾斜計)による後弯角、身体機能の指標、生活の質には、有意な改善が見られませんでした。
研究者らは、「過度な後弯は改善しうる」ことを示す最初の一歩としつつ、より大規模で厳密な試験が必要だとしています。効果があるとしても小さく、測定方法によって結果が分かれる、という段階です。
ヨガは、首の痛み・肩こりにも効くのか
腰だけでなく、首の痛みに対するヨガの効果も調べられています。慢性の非特異的な首の痛みを対象に、ヨガと通常のケアを比べた3試験(188人)を統合した、メタ解析があります(Cramer et al., 2017, Clinical Rehabilitation)。
短期的な効果として、首の痛みの強さ(標準化平均差 -1.28)、首の痛みに関連する機能障害(同 -0.97)、生活の質(同 0.57)、気分(同 -1.02)のいずれも、ヨガ群のほうが改善していました。安全性のデータがあった2試験では、重い有害事象は起こっていません。研究者らは、ヨガは首の痛みの良い治療選択肢かもしれない、と結論づけています。
ただし、対象となった試験はわずか3件で、いずれも小規模です。また、比較の相手が「通常のケア」であり、他の運動との比較ではありません。
「姿勢そのもの」への運動の効果:22研究のレビュー
腰痛ではなく、姿勢の崩れそのものに対する運動の効果を整理した、系統的レビューもあります(Porto et al., 2024, Journal of Bodywork and Movement Therapies)。22件の研究を、「頭部前方位・肩の機能障害」「過度な後弯」「姿勢アライメント」「側弯」の4つに分けて検討しています。
結論として、弱く伸びている側の筋肉を強化し、短く強い側の筋肉をストレッチする、といった、さまざまな種類の運動が、姿勢の機能障害の改善に有効そうだとされています。そのうえで、運動の強度・量・期間と、姿勢の崩れに関わる筋肉への特異的な運動を行うことを、考慮する必要があるとしています。
つまり、ピラティスやヨガといった「名前」より、どの筋肉に、どのくらいの強度で、どれだけ続けるかが重要だという整理です。これは、巻き肩の記事や猫背の原因の記事で見てきた、「姿勢は複数の要因が重なって作られる」という考え方とも整合します。
更年期の症状とヨガ
40〜50代の方にとって、ヨガは、姿勢や腰痛だけでなく、更年期のつらさへの対処としても関心を集めています。ヨガ・太極拳・気功を対象にした2017年の統合解析(Shepherd-Banigan et al., 2017, Complementary Therapies in Medicine)では、ヨガで、ほてりなどの症状と心理的な症状の両方が軽くなる傾向が示されました。
ただし、有害事象の報告がほとんどなく、評価の方法も統一されていないため、結論は慎重に受け止める段階です。更年期と運動の関係は、更年期と睡眠の記事や、更年期の体型変化の記事でも、別の角度から整理しています。
どう選べばよいか
ここまで見ると、ピラティスもヨガも、「何もしないよりは有益かもしれないが、他の運動より特別に優れているとは言えない」という共通点があります。その場合、続けやすさ、楽しめるかどうか、費用、通いやすさといった要素が、選ぶうえでの現実的な基準になります。
また、ヨガでは、痛みの増加が報告されている点には注意が必要です。ポーズによっては、背中や腰に強い負荷がかかる場合もあります。痛みが出る場合は無理に続けず、インストラクターや専門家に相談することが大切です。
体幹の筋肉に注目した運動の考え方については、体幹トレーニングの記事やインナーマッスルの記事、背中の丸みに対する装具については、猫背矯正ベルトの記事もご覧ください。
ヨガの安全面:事例報告から分かること
ヨガは一般に安全とされますが、事例報告も整理されています。2013年に発表された系統的レビューでは、ヨガに関連した有害事象の35の症例報告と2つの症例集積(合計76例)が検討されています(Cramer et al., 2013, PLoS One)。
有害事象の内訳は、筋骨格系が27件(35.5%)、神経系が14件(18.4%)、眼が9件(11.8%)でした。多く報告されていたのは、頭立ち、肩立ち、蓮華座といったポーズや、強制的な呼吸法でした。転帰は、完全回復が15例(19.7%)、部分的な回復が9例(11.3%)で、回復しなかった例と死亡例が、それぞれ1例ずつ報告されています。
これは事例報告の集まりなので、「ヨガでどのくらいの頻度で事故が起こるか」は分かりません。ヨガが危険だという意味でもありません。著者らは、資格のある指導者のもとで行うこと、初心者は頭立ち・蓮華座・強制的な呼吸法のような極端な実践を避けること、緑内障のある方は逆転姿勢を避け、骨がもろい方は強い呼吸法を避けることを勧めています。
無理なく始めるために
- 「どれがいいか」で迷うより、通いやすく、続けられるものを選ぶ
- 最初は短時間・弱い強度から始め、痛みが出たらその動きは中止する
- インストラクターに、腰痛や猫背があることを事前に伝える
- 週1回でも、日常の動作の中で背中や体幹を使う習慣を並行して持つ
- 痛みが強い、しびれがあるといった場合は、始める前に医療機関で相談する
まとめ:選ぶ基準は、「効果の差」より「続けやすさ」
ピラティスは、最小限の介入と比べて腰痛の痛みと機能障害を改善する可能性があり、ヨガは、運動をしない場合と比べて小さな改善を示しました。ただし、いずれも、他の運動より優れているとまでは言えません。
円背に対するヨガの効果も、一部の測定法でのみ、4〜5%程度の改善にとどまっています。「これをすれば姿勢が変わる」と期待しすぎず、続けやすい運動を選び、痛みが出ない範囲で習慣にしていくことが、現実的な向き合い方だと考えています。
あわせて、運動の種類を横並びで比べた解析では、ピラティスが痛み・機能障害の両方で上位に位置したこと、ヨガは首の痛みにも短期的な効果を示す可能性があること、一方で、ポーズによっては有害事象の報告もあることが分かっています。ピラティスやヨガを選ぶ際は、効果の期待だけでなく、指導者のもとで無理のない範囲から始めることも大切です。
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参考文献
- Yamato TP, Maher CG, Saragiotto BT, et al. (2015). Pilates for low back pain. Cochrane Database Syst Rev, 2015(7), CD010265. DOI: 10.1002/14651858.CD010265.pub2
- Wieland LS, Skoetz N, Pilkington K, et al. (2022). Yoga for chronic non-specific low back pain. Cochrane Database Syst Rev, 2022(11), CD010671. DOI: 10.1002/14651858.CD010671.pub3
- Greendale GA, Huang MH, Karlamangla AS, et al. (2009). Yoga decreases kyphosis in senior women and men with adult-onset hyperkyphosis: results of a randomized controlled trial. J Am Geriatr Soc, 57(9), 1569-1579. DOI: 10.1111/j.1532-5415.2009.02391.x
- Porto AB, Nascimento Guimarães A, Alves Okazaki VH. (2024). The effect of exercise on postural alignment: A systematic review. J Bodyw Mov Ther, 40, 99-108. DOI: 10.1016/j.jbmt.2024.04.004
- Shepherd-Banigan M, Goldstein KM, Coeytaux RR, et al. (2017). Improving vasomotor symptoms; psychological symptoms; and health-related quality of life in peri- or post-menopausal women through yoga: An umbrella systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med, 34, 156-164. DOI: 10.1016/j.ctim.2017.08.011
- Fernández-Rodríguez R, Álvarez-Bueno C, Cavero-Redondo I, et al. (2022). Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther, 52(8), 505-521. DOI: 10.2519/jospt.2022.10671
- Cramer H, Klose P, Brinkhaus B, Michalsen A, Dobos G. (2017). Effects of yoga on chronic neck pain: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil, 31(11), 1457-1465. DOI: 10.1177/0269215517698735
- Cramer H, Krucoff C, Dobos G. (2013). Adverse events associated with yoga: a systematic review of published case reports and case series. PLoS One, 8(10), e75515. DOI: 10.1371/journal.pone.0075515
