座りっぱなしは何が悪い?座位行動と健康リスクの関係

運営者:りっぽうたい(柔道整復師・介護福祉士/東京で整骨院を開業)|プロフィール

座位保持,腰痛,運動不足 運動・コンディショニング

デスクワーク中心の生活では、気づけば1日の大半を座って過ごしている、という方も多いのではないでしょうか。近年、この「座りすぎ」が健康リスクとして注目されるようになっています。

一方で、「仕事終わりに運動しているから大丈夫」と考えている方もいると思います。今回は、座位時間と健康リスクの関係について、研究データをもとに整理していきます。

座りすぎ自体が、独立したリスク要因

まず押さえておきたいのが、座っている時間の長さそのものが、健康リスクと関連しているという点です。6件の前向きコホート研究・59万人以上のデータを統合したメタ解析(Chau et al., 2013, PLoS ONE)では、1日の総座位時間が長くなるほど、全死亡リスクが段階的に高まるという関連が確認されています。

つまり、座位時間の長さは、運動をしているかどうかとは別に、それ自体が体に負担をかける要因になりうるということです。

「運動していれば座りっぱなしでも大丈夫」なのか

では、「運動さえしていれば、座りすぎの影響は相殺できるのではないか」という疑問について、大規模な研究があります。100万人以上のデータを統合したメタ解析(Ekelund et al., 2016, Lancet)です。

この研究では、1日60〜75分程度の中強度の運動をしている最も活発なグループでは、1日8時間以上座っていても、死亡リスクの明確な増加が見られなかったと報告されています(座位4時間未満・最も活発な運動量の群を基準とした場合のハザード比1.04)。

一方、運動量が少ないグループでは、座位時間が長いほど死亡リスクが12〜59%高いという結果でした。ある程度しっかり運動をしていれば、長時間の座位による影響を打ち消せる可能性がある、というのがこの研究の結論です。

ただし、それだけでは説明しきれない結果も

ところが、この「運動していれば大丈夫」という理解には、注意が必要かもしれません。オーストラリアの中高年約15万人を対象にした前向きコホート研究(Stamatakis et al., 2019, Journal of the American College of Cardiology)では、少し異なる結果が示されています。

この研究では、推奨されるレベルの運動量を満たしているグループであっても、1日8時間以上座っている場合には、死亡リスクがなお高いまま残っていたことが報告されています(ハザード比1.27)。

先ほどのEkelund(2016)の研究では「運動量が非常に多ければ相殺できる」という結果でしたが、Stamatakis(2019)では「一般的に推奨される程度の運動量では、座りすぎのリスクを完全には打ち消せない」という、やや厳しめの結果になっています。

座位時間と死亡リスクの関係(Ekelund 2016 / Stamatakis 2019 のハザード比)
座位時間と死亡リスクの関係(Ekelund 2016 / Stamatakis 2019 のハザード比)

なぜ結論に差が出るのか

2つの研究で結論に差が出る背景には、いくつかの理由が考えられます。Ekelund(2016)は複数の国のさまざまな集団データを統合した研究であるのに対し、Stamatakis(2019)はオーストラリアの中高年に絞った単一のコホート研究であり、対象集団の年齢層や生活習慣が異なります。

また、「運動量が多い」の基準や、座位時間の測定方法(自己申告のアンケートなど)も研究によって異なるため、単純に優劣をつけられるものではありません。ある程度の運動でリスクを軽減できる可能性はあるが、座位時間そのものを減らす工夫も、あわせて重要である、という理解が現時点では妥当だといえます。

「何時間から」が問題になるのか:座位時間の目安

「座りすぎ」と言われても、1日に何時間座っていたら問題なのか、気になる方も多いと思います。この点を調べたのが、34の前向き研究・約133万人のデータを統合し、運動量を調整したうえで座位時間とリスクの関係の「形」を分析した研究です(Patterson et al., 2018, European Journal of Epidemiology)。

この解析では、座位時間とリスクの関係は直線的ではなく、ある時間を超えると傾きが急になることが示されました。全死亡については、座位が1日8時間までは1時間増えるごとのリスク上昇が約1%(相対リスク1.01)にとどまるのに対し、8時間を超えると1時間ごとに約4%(同1.04)へ大きくなります。心血管疾患による死亡では、この折れ目が6時間付近にありました。

著者らはこれをもとに、総座位時間では1日6〜8時間、テレビ視聴では3〜4時間あたりに、リスクが高まりはじめる目安があるとまとめています。ただし、これは「ここを超えたら危険、下回れば安全」という境界線ではなく、リスクの上がり方が変わる目安です。座位時間の多くが自己申告で測られている点にも注意が必要です。

テレビを観る時間は、とくに強く関連する

同じ解析では、座位時間のなかでもテレビ視聴時間のほうが、運動量を調整したあとでも、やや強い関連を示しました。全死亡のリスクは、テレビ視聴が1日3.5時間までは1時間あたり約3%(相対リスク1.03)、3.5時間を超えると約6%(同1.06)の上昇でした。心血管疾患による死亡は、4時間を超えたあたりから1時間あたり約8%(同1.08)の上昇、2型糖尿病の発症は1時間あたり約9%(同1.09)の上昇でした。

なぜテレビ視聴で関連が強く出るのかは、この解析では検証されていません。間食をしながら長時間動かずに過ごしやすいなど、座り方以外の生活習慣の違いが背景にある可能性も考えられます。

病気ごとに見ると:2型糖尿病で最も大きな差

座位時間と病気のリスクを、47本の論文から整理したレビューもあります(Biswas et al., 2015, Annals of Internal Medicine)。運動量を調整したうえで、座位時間が長い人はそうでない人に比べて、全死亡のハザード比が1.24、心血管疾患による死亡が1.18、がんによる死亡が1.17、2型糖尿病の発症が1.91と報告されています。

なかでも2型糖尿病の発症では、ほぼ2倍の差が出ている点が目を引きます。また、これらの関連は、運動量が少ない人ほど顕著になる傾向がありました。一方で、研究ごとに座位時間や運動量の測り方が大きく異なる(ほとんどが自己申告)という限界も、著者ら自身が指摘しています。「座るほど必ず病気になる」という意味ではなく、集団として見たときの傾向だと理解しておく必要があります。

日本は、座る時間が長い国のひとつ

座位時間の国際比較もあります。20か国・18〜65歳の約4.9万人を対象にした調査(Bauman et al., 2011, American Journal of Preventive Medicine)では、平日の座位時間の中央値は全体で1日300分(5時間)でした。国別では、ポルトガル・ブラジル・コロンビアが180分以下と短い一方、台湾・ノルウェー・香港・サウジアラビア・日本では中央値が360分(6時間)以上と、最も長いグループに入っています。

この調査は2002〜2004年に行われたもので、現在の数値とは異なる可能性があります。それでも、先に見た「1日6〜8時間」という目安と重ねると、デスクワーク中心の生活では、気づかないうちに目安に近づきやすい環境にあるといえます。座りっぱなしを中断したときに体で何が起こるかについては、座りすぎは本当に身体に悪い?の記事で詳しく扱っています。

まとめ:運動と座位時間の両方に目を向ける

ここまで見てきたように、座位時間そのものが健康リスクと関連していることは複数の研究で確認されています。運動習慣によってそのリスクをある程度軽減できる可能性がある一方で、運動量を満たしていても、座りすぎの影響がすべて解消されるとは限らないという報告もあります。

「運動しているから大丈夫」と一つの対策に頼りきるのではなく、こまめに立ち上がる、座位時間そのものを減らす工夫を取り入れることも、あわせて意識しておきたいポイントです。

あわせて、座位時間には「1日6〜8時間」「テレビは3〜4時間」といったリスクが高まりはじめる目安が示されており、日本は座る時間が長い国のひとつでもあります。まずは、自分が1日にどれくらい座っているかを把握することから始めてみるのがよさそうです。

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参考文献

  • Chau JY, Grunseit AC, Chey T, Stamatakis E, Brown WJ, Matthews CE, Bauman AE, van der Ploeg HP. (2013). Daily sitting time and all-cause mortality: a meta-analysis. PLoS ONE, 8(11), e80000. DOI: 10.1371/journal.pone.0080000
  • Ekelund U, Steene-Johannessen J, Brown WJ, Fagerland MW, Owen N, Powell KE, Bauman A, Lee IM. (2016). Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. Lancet, 388(10051), 1302-1310. DOI: 10.1016/S0140-6736(16)30370-1
  • Stamatakis E, Gale J, Bauman A, Ekelund U, Hamer M, Ding D. (2019). Sitting time, physical activity, and risk of mortality in adults. Journal of the American College of Cardiology, 73(16), 2062-2072. DOI: 10.1016/j.jacc.2019.02.031
  • Patterson R, McNamara E, Tainio M, de Sá TH, Smith AD, Sharp SJ, Edwards P, Woodcock J, Brage S, Wijndaele K. (2018). Sedentary behaviour and risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and incident type 2 diabetes: a systematic review and dose response meta-analysis. Eur J Epidemiol, 33(9), 811-829. DOI: 10.1007/s10654-018-0380-1
  • Biswas A, Oh PI, Faulkner GE, Bajaj RR, Silver MA, Mitchell MS, Alter DA. (2015). Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med, 162(2), 123-132. DOI: 10.7326/M14-1651
  • Bauman A, Ainsworth BE, Sallis JF, Hagströmer M, Craig CL, Bull FC, Pratt M, Venugopal K, Chau J, Sjöström M. (2011). The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med, 41(2), 228-235. DOI: 10.1016/j.amepre.2011.05.003
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