猫背が気になる方の間で、手軽に姿勢を整えられるアイテムとして人気があるのが「姿勢矯正ベルト」です。肩を後ろに引き寄せるようなベルトを着けるだけで猫背が改善する、という説明を目にしたことがある方も多いと思います。
今回は、この「矯正ベルト(装具)」の効果について、実際にどこまで研究データで裏付けられているのかを整理していきます。
研究データで見る実際の効果
脊柱の装具(ブレース)を使った猫背(円背・後弯)改善についての研究は、いくつか存在します。閉経後で骨粗しょう症のある女性62人を対象にしたランダム化比較試験(Pfeifer, Begerow, & Minne, 2004, American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation)では、「Spinomed」という装具を1日2時間、6ヶ月間装着したグループで、猫背の角度(円背角)が11%減少し、身長・背筋力・姿勢の安定性も改善したと報告されています。
また、骨粗しょう症の女性を対象にした装具の効果に関するシステマティックレビュー(Sánchez-Pinto-Pinto et al., 2022, Medicina)でも、低リスクの質の高いランダム化比較試験4件(326人)を統合した結果、「ダイナミック・ハイパーエクステンション装具」と呼ばれるタイプの装具を1日2時間以上・6ヶ月間装着することで、機能性・可動性・背筋力・呼吸機能が改善し、円背角も減少したと結論づけられています。
ここまで見ると、「装具=効果がある」と思える内容です。ただし、ここで重要な注意点があります。
重要な注意点:研究対象は「一般的な矯正ベルト」とは違う可能性がある
これらの研究で効果が確認されている装具は、「Spinomed」や「ダイナミック・ハイパーエクステンション装具」と呼ばれる、背筋の活動を促すセンサー的な役割を持つ、能動的(アクティブ)なタイプの医療用装具です。
これは、単に肩を後ろに引っ張って姿勢を「固定」するだけの受動的な装具とは仕組みが異なります。実際、先ほどのシステマティックレビュー(Sánchez-Pinto-Pinto et al., 2022)を引用する別の総説でも、「受動的な装具は、こうした(能動的な装具のような)良い効果をもたらさない」と指摘されています。
つまり、市販されている一般的な「姿勢矯正ベルト」の多くが、これらの研究で使われた医療用の能動的装具と同じ仕組みを持っているとは限りません。研究の対象も、骨粗しょう症のある高齢の女性という、限定された集団である点にも注意が必要です。
装着時間・期間も重要な要素
効果が確認されている研究に共通しているのが、装着時間と期間がある程度まとまっていることです。いずれの研究も、1日2時間以上、6ヶ月間という装着条件で効果が検証されています。
短時間だけ装着したり、数日〜数週間程度使っただけで判断したりする場合、これらの研究と同じような効果が得られるとは言い切れません。
装具だけでなく、運動を組み合わせるとさらに良い
思春期の円背(構造的な猫背)がある180人を対象にしたランダム化比較試験(Gheitasi, Bayattork, & Kolur, 2023, PM&R)では、装具のみのグループ、装具に加えて矯正エクササイズを行ったグループ、待機対照群の3グループを比較しています。
その結果、装具のみのグループでも円背角の改善(8.75度の減少)が見られましたが、装具にエクササイズを組み合わせたグループでは、さらに大きな改善(15.46度の減少)が確認されました。装具単体よりも、運動と組み合わせる方が効果的であることを示す結果です。
まとめ:装具の種類・使い方次第で結果は変わる
ここまで見てきたように、特定のタイプの装具(能動的な医療用装具)を、十分な時間・期間、正しく使った場合には、猫背の改善に一定の効果があるという研究データがあります。「矯正ベルトはまったく意味がない」と一概には言えません。
一方で、これらの効果が確認されているのは、骨粗しょう症のある高齢女性を対象にした、能動的なタイプの医療用装具についての研究であり、市販の一般的な矯正ベルトすべてに、同じ効果があると保証されているわけではありません。また、装具だけに頼るより、運動と組み合わせる方が効果的だという点も、あわせて知っておきたいポイントです。
矯正ベルトを選ぶ際は、どのような仕組みの製品か、どのくらいの期間・時間使うことを想定しているかを確認し、運動などの他の対策と組み合わせて考えることをおすすめします(効果の出方には個人差があります)。
参考文献
- Pfeifer M, Begerow B, Minne HW. (2004). Effects of a new spinal orthosis on posture, trunk strength, and quality of life in women with postmenopausal osteoporosis: A randomized trial. American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation, 83(3), 177-186.
- Sánchez-Pinto-Pinto B, Romero-Morales C, López-López D, de-Labra C, García-Pérez-de-Sevilla G. (2022). Efficacy of Bracing on Thoracic Kyphotic Angle and Functionality in Women with Osteoporosis: A Systematic Review. Medicina, 58(6), 693. DOI: 10.3390/medicina58060693
- Gheitasi M, Bayattork M, Kolur MK. (2023). Adding corrective exercises along with bracing for postural hyperkyphosis among adolescents: A randomized controlled trial. PM&R, 15(7), 872-880. DOI: 10.1002/pmrj.12877

