一部PRを含みます

マグネシウムと筋肉の関係:経口と経皮、効果に違いはあるのか


身体の基本(生理学・栄養学)

マグネシウムは筋肉をゆるめる、こむら返りに効く、というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。今回はその根拠と、話題になりがちな経皮タイプ(スプレー・オイル)との違いについて、研究データを整理します。

なぜ「マグネシウムは筋肉をゆるめる」と言われるのか

マグネシウムは、筋肉の収縮と弛緩に関わる細胞内のカルシウムの動きを調整する働きを持つミネラルです。筋肉の収縮にはカルシウムが、弛緩にはマグネシウムがそれぞれ関わっており、両者のバランスが崩れると、筋肉が過剰に収縮しやすくなる(こむら返りが起きやすくなる)という理論的な背景があります。

この仕組み自体は生理学的に妥当なものですが、「理論上そうなるはず」ということと、「実際に補給すれば症状が改善する」ということは、必ずしもイコールではありません。

こむら返りへの効果:研究データで見ると

2017年に発表されたランダム化比較試験(Roguin Maor et al., 2017, JAMA Internal Medicine)では、こむら返りに悩む94人の地域在住高齢者を対象に、酸化マグネシウムとプラセボの効果が比較されました。

その結果、マグネシウム群とプラセボ群のあいだに、こむら返りの頻度・強さ・持続時間のいずれにおいても統計的に意味のある差は見られませんでした。両グループとも症状は改善しており、研究チームはこれを「プラセボ効果である可能性が高い」と結論づけています。

つまり、少なくとも高齢者の夜間のこむら返りに関しては、マグネシウムの効果は明確に証明されていないというのが、現時点でもっとも質の高い研究の結論です。

一方で、効果が確認されている場面もある

一律に「効果がない」と結論づけるのも、実は正確ではありません。1998年に発表された研究(Walker et al., 1998, Journal of Women’s Health)では、月経前に手足のむくみや体重増加、乳房の張りといった症状を訴える女性44人を対象に、1日200mgのマグネシウム補給を2周期にわたって行うランダム化比較試験が実施されました。

その結果、むくみ・体重増加といった「水分貯留」に関連する症状が、プラセボ群と比べて有意に軽減したと報告されています。対象者の年代や症状の種類(慢性的な高齢者のこむら返り vs 月経周期に伴う一時的な水分貯留)が異なるため、単純に「マグネシウムが効く・効かない」と一括りにはできないことがわかります。

経口と経皮、効果に違いはあるのか

通販サイトでは、飲むタイプのサプリメントだけでなく、肌に塗る・スプレーするタイプの「経皮マグネシウム」も数多く販売されています。この2つは、体内への吸収経路が大きく異なります。

経口マグネシウムとは

口から摂取し、腸で吸収されるタイプです。吸収率は形態(酸化・クエン酸塩・グリシン酸塩など)によって差があるとされていますが、長年にわたって研究データが蓄積されており、有効性・安全性の評価が比較的確立しています。

経皮マグネシウムとは

皮膚に塗布・スプレーして、皮膚から吸収させることを狙ったタイプです。2017年に発表されたレビュー(Gröber et al., 2017, Nutrients)では、この経皮吸収についての研究データが検証されています。

その結論は明確で、皮膚のもっとも外側にある角質層は、マグネシウムイオンのような水に溶けやすい物質をほとんど通さないため、健康な皮膚からの吸収量は臨床的に意味のあるレベルには達しないとされています。

皮膚に浸透するのは、主に汗腺や毛穴といった皮膚表面のごく一部(0.1〜1%程度)を通じてのみで、レビューの著者らは「経皮マグネシウムの普及は科学的根拠に裏付けられていない」と結論づけています。

摂るなら、どう向き合うべきか

ここまでの内容を踏まえると、マグネシウムを試すのであれば、経皮ではなく経口での摂取のほうが、これまでの研究の蓄積という点で理にかなっていると考えられます。

ただし、高齢者の慢性的なこむら返りに対する効果は証明されていない一方、月経周期に伴う一時的な水分貯留のような症状には、一定の効果を示すデータもあります。「これを飲めば必ずこむら返りが治る」という魔法の成分ではなく、症状の種類によって効果の見え方が変わる、という前提で向き合うのがよさそうです。

過剰摂取は下痢などの消化器症状を招くこともあるため、用量を守ることも大切です。

undefined
undefined

日常でできること

  • サプリメントに頼る前に、水分補給・ストレッチなど基本的な対策も見直す
  • こむら返りが頻繁に続く場合は、他の病気が隠れていないか医療機関に相談する
  • マグネシウムを試すなら経口タイプを選び、パッケージの用量を守る
  • 「経皮マグネシウム」の効果は、現時点では十分な根拠が示されていないと知っておく
  • 腎機能に問題がある場合は、自己判断でのミネラル摂取前に医師に相談する

まとめ

マグネシウムには筋肉の弛緩に関わる生理学的な役割がありますが、高齢者の慢性的なこむら返りへの効果は、質の高い研究では確認されていません。一方で、月経前の水分貯留のような症状には効果を示すデータもあり、症状によって評価が分かれるのが実情です。経皮吸収については明確に否定的な結論が出ているため、試すなら経口タイプを選ぶのが妥当だと考えられます。

関連記事

参考文献

  • Roguin Maor N, Alperin M, Shturman E, et al. Effect of Magnesium Oxide Supplementation on Nocturnal Leg Cramps: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2017;177(5):617-623. DOI: 10.1001/jamainternmed.2016.9261
  • Walker AF, De Souza MC, Vickers MF, Abeyasekera S, Collins ML, Trinca LA. Magnesium supplementation alleviates premenstrual symptoms of fluid retention. J Womens Health. 1998;7(9):1157-1165. DOI: 10.1089/jwh.1998.7.1157
  • Gröber U, Werner T, Vormann J, Kisters K. Myth or Reality-Transdermal Magnesium? Nutrients. 2017;9(8):813. DOI: 10.3390/nu9080813
タイトルとURLをコピーしました