夜中に体がカッと熱くなって目が覚める。汗をかいて、そのあと眠れなくなる——更年期の世代で、こうした夜を経験する方は少なくありません。
今回は、夜間のほてりと睡眠の関係について、睡眠を測定した研究と、対策に関する研究データを整理します。
夜のほてりとは何か
更年期に起こる、突然の熱感や発汗は、医学的には「血管運動症状」と呼ばれ、一般には「ホットフラッシュ」として知られています。夜に起こると寝汗を伴い、睡眠の途中で目が覚める原因になります。
血管運動症状とは
エストロゲンの低下などを背景に、体温を調節する仕組みが乱れて起こる、顔や上半身の急な熱感、発汗、動悸などの症状です。昼夜を問わず起こり、夜間に起こるものは睡眠への影響が気になるところです。
「ほてりで目が覚める」のか、「目が覚めてほてりに気づく」のか
実際の睡眠中に何が起きているかは、睡眠ポリグラフ(脳波などを測る検査)を使った研究で調べられています。
2016年の研究(Bianchi et al., Journal of Clinical Sleep Medicine)では、閉経前の健康な女性28人に、閉経に近い状態を薬で誘発してもらい(リュープロレリン)、その前後の睡眠を測定しました。すると、客観的に記録されたほてりの大半は、目が覚めている間か、ごく浅い睡眠(N1)の間に起こっており、約3分の2は覚醒から5分以内に起きていました。
さらに興味深いのは、測定されたほてりそのものは、覚醒への移行の増加とは結びついていなかった一方、「夜にほてりがあった」という自己申告は、覚醒への移行の増加と関連していた点です。著者らは、睡眠が乱れると、ほてりに気づきやすく、記憶にも残りやすくなる可能性を指摘しています。
ただし、この研究は少人数で、薬剤で誘発した状態を調べたものです。自然な更年期の女性にそのまま当てはまるとは限らない点には注意が必要です。それでも、「ほてりを抑えれば眠れる」という単純な話ではないことがうかがえます。
眠りを立て直す:不眠の認知行動療法(CBT-I)
CBT-Iとは
不眠に対する認知行動療法の略称です。眠れない時間を布団の中で過ごさないようにする(睡眠制限)、寝室を睡眠の場所として再び結びつける(刺激コントロール)、眠りに関する不安や思い込みを見直す、といった方法を組み合わせます。薬を使わない不眠の治療として知られています。
2016年のランダム化比較試験(McCurry et al., JAMA Internal Medicine)では、中等度の不眠と1日2回以上のほてりがある40〜65歳の女性106人を、電話によるCBT-Iと、更年期の教育(対照)に分けて比べました。電話で、8週間に6回のセッションです。
その結果、不眠の重症度(ISI)は、CBT-I群で9.9点、対照群で4.7点の低下で、差は5.2点でした。睡眠の質の指標(PSQI)も、CBT-I群のほうが大きく改善し、この差は24週後も保たれていました。8週時点で不眠が解消した人の割合は、CBT-I群で70%、対照群で24%でした。
一方、1日あたりのほてりの回数には、2つのグループで差がありませんでした。差が出たのは、ほてりによる「支障度」で、CBT-I群のほうが大きく低下しています。つまり、ほてり自体を減らすというより、ほてりに振り回されにくくする方向に役立つ、という見方ができます。
運動は夜の睡眠に役立つか
2023年のメタ解析(Qian et al., Frontiers in Medicine)は、閉経後を含む更年期女性への運動介入を調べた17件のRCT(うち10件を統合)をまとめています。運動をした群では、不眠の重症度が有意に改善しました(効果量SMD −0.91)。
一方で、「睡眠の質」のスコアでは有意な差がなく、効果は、もともと睡眠障害のある人でより明確でした。最適な運動の種類や期間は、まだはっきりしていません。

日常でできること
- 夜中に目が覚めても、時計を何度も確認して焦らない(「眠らなければ」という緊張が、さらに眠りを遠ざけることがあるため)
- 眠れないまま布団の中で長く過ごさず、「眠くなってから布団に入る」ことを意識する(CBT-Iの考え方のひとつ)
- 日中に体を動かす習慣をつくり、無理のない範囲で続ける
- ほてりや不眠が週に何度も続き、日中の生活に支障が出ている場合は、婦人科や更年期外来に相談する
- ホルモン補充療法などの医療的な選択肢には、向き不向きがあるため、自己判断ではなく医師と相談する
まとめ
夜中のほてりと目覚めは、「ほてりが睡眠を壊す」という一方向の関係だけでは説明しきれません。睡眠が浅いほど、ほてりに気づきやすくなる面もあるようです。対策としては、ほてり自体を減らす方法だけでなく、眠りを立て直す認知行動療法や、運動習慣にも研究データがあります。つらい夜が続くときは、一人で抱え込まず、専門家に相談することも大切な選択肢です。
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参考文献
- Bianchi MT, Kim S, Galvan T, White DP, Joffe H. Nocturnal Hot Flashes: Relationship to Objective Awakenings and Sleep Stage Transitions. J Clin Sleep Med. 2016;12(7):1003-1009. DOI: 10.5664/jcsm.5936
- McCurry SM, Guthrie KA, Morin CM, et al. Telephone-Based Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia in Perimenopausal and Postmenopausal Women With Vasomotor Symptoms: A MsFLASH Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2016;176(7):913-920. DOI: 10.1001/jamainternmed.2016.1795
- Qian J, Sun S, Wang M, et al. The effect of exercise intervention on improving sleep in menopausal women: a systematic review and meta-analysis. Front Med (Lausanne). 2023;10:1092294. DOI: 10.3389/fmed.2023.1092294
