運動でホットフラッシュは減る?更年期の血管運動症状と運動の関係

運営者:りっぽうたい(柔道整復師・介護福祉士/東京で整骨院を開業)|プロフィール

更年期 ホルモン エストロゲン 睡眠・生活習慣

更年期のつらい症状の代表が、ほてりや急な発汗(ホットフラッシュ)です。「運動すると和らぐ」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。この点は、研究データでどこまで確かめられているのでしょうか。

ホットフラッシュとは:血管運動症状

ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・急な発汗)は、更年期の女性に最もよくみられる症状で、医学的には「血管運動症状」と呼ばれます。エストロゲンの変動に関わる症状で、ホルモン療法が有効な手段の一つとされています。

ただし、ホルモン療法については、リスクと恩恵に関する懸念から、世界的に使用が減っています。そのため、ホルモン療法を選ばない女性を中心に、生活習慣による対処法を求める声が高まっていることが、運動の効果を検証する研究の背景になっています(Daley et al., 2014)。

コクラン・レビュー:運動の効果は「確かめられていない」

運動が血管運動症状に効くかどうかを調べた、コクラン・レビューがあります(Daley et al., 2014, Cochrane Database of Systematic Reviews)。5件のランダム化比較試験(733人)が対象で、エビデンスの質は低いと評価されています。

運動と、何も治療しない場合を比べた3件の試験(454人)では、症状の頻度や強さに、群間の差は見られませんでした(標準化平均差 -0.10、95%信頼区間 -0.33〜0.13)。運動とヨガを比べた2件の試験(279人)でも、差はありませんでした(同 -0.03)。

一方、運動とホルモン療法を比べた小さな試験(14人)では、24時間あたりのほてりの回数が、ホルモン療法の群で有意に少なかったと報告されています(平均差 5.8回)。著者らは、運動が血管運動症状の治療として有効かどうかを示すには、エビデンスが不十分だと結論づけています。

運動とホットフラッシュ、「回数」への効果は確かめられていない
運動とホットフラッシュ、「回数」への効果は確かめられていない

より新しい解析:「重症度」には効く可能性、「回数」には変化なし

その後、21件のランダム化比較試験(2,884人)を統合した、メタ解析も発表されています(Liu et al., 2022, Climacteric)。

運動は、何もしない場合と比べて、症状の「重症度」を有意に改善しました(標準化平均差 0.25、95%信頼区間 0.04〜0.47、エビデンスの確実性は非常に低い)。ただし、バイアスのリスクが高い研究を除くと、効果は小さくなり、有意ではなくなりました(0.11、-0.03〜0.26)。

一方、症状の「頻度(回数)」には、運動と対照群の間に、有意な変化は見られませんでした(0.14、-0.03〜0.31、確実性は高い)。著者らは、運動は血管運動症状の重症度を改善する可能性があるが、質の高い試験が必要だと結論づけています。

整理すると、「運動をすればほてりの回数が減る」とは言えず、「つらさが多少和らぐ可能性はあるが、確かではない」という段階です。

ヨガは、ほてりや気分に役立つ可能性がある

運動の中でも、ヨガについては、やや前向きな結果が示されています。ヨガ、太極拳、気功が、更年期のほてり(血管運動症状)や心理的な症状に与える影響を整理した、統合解析があります(Shepherd-Banigan et al., 2017, Complementary Therapies in Medicine)。

質の高い系統的レビュー1件(5試験・582人)と、その後の新たな3試験(345人)を統合した結果、ヨガは、対照群と比べて、血管運動症状(5試験、標準化平均差 -0.27、95%信頼区間 -0.49〜-0.05)と、心理的な症状(6試験、同 -0.32、-0.47〜-0.17)を軽減していました。太極拳と気功を評価した研究は、見つかっていません。

著者らは、ヨガは、つらい血管運動症状や心理的症状への対処として有用かもしれないとしています。ただし、有害事象はほとんど報告されておらず、測定方法も標準化されていないという限界があり、先に見たコクラン・レビューで「運動」と「ヨガ」の間に差がなかった点とあわせて、結論は慎重に受け止める必要があります。

リラクセーション(弛緩法)はどうか

運動以外のアプローチとして、リラクセーションの効果を調べたコクラン・レビューもあります(Saensak et al., 2014, Cochrane Database of Systematic Reviews)。4件の研究(281人)が対象で、リラクセーションを、電気鍼・浅い鍼、ペース呼吸、プラセボ、無治療と比べています。

電気鍼や浅い鍼との比較では、24時間あたりのほてりの回数(平均差 0.05回、95%信頼区間 -1.33〜1.43、2研究・72人)にも、重症度にも、差は見られませんでした(いずれも非常に低い質のエビデンス)。他の2件の研究でも、ペース呼吸・プラセボ・無治療との間に、ほてりの回数の明確な差は見られていません。夜間の発汗や睡眠、有害事象を評価した研究はありませんでした。

著者らは、リラクセーションが更年期の血管運動症状に有効かどうかを示すには、エビデンスが不十分だと結論づけています。「リラックスすればほてりが減る」とも「効かない」とも、現時点では言い切れない、ということです。

運動以外の非薬物療法:臨床催眠の試験

運動やリラクセーションの効果が確かめられていない一方で、ホルモン療法以外の方法として、臨床催眠の試験が行われています。週に50回以上のほてりがある閉経後の女性187人を、臨床催眠のセッションを週1回・5回受ける群と、構造化された注意(対照)の群に割り付けた、ランダム化比較試験です(Elkins et al., 2013, Menopause)。

12週後、自己申告したほてりの回数は、臨床催眠の群で平均74.2%(55.8回)減ったのに対し、対照群では17.1%(12.9回)の減少でした(p<0.001)。ほてりのスコアは、臨床催眠群で80.3%、対照群で15.4%減っています。生理学的な測定でも、ほてりの回数は、臨床催眠群で56.9%、対照群で9.9%減っていました。ほてりによる生活への支障、睡眠の質、治療への満足度も、臨床催眠群のほうが有意に改善しています。

結果は大きなものですが、この試験は、単盲検で、実施した研究グループも限られています。臨床催眠は、専門的な訓練を受けた実施者による、ある程度の回数のセッションが必要な治療でもあり、すぐに誰でも受けられる選択肢ではありません。それでも、「ほてりの回数」という点で、運動には確かめられていない効果が、別の非薬物療法では示されていることは、覚えておきたい点です。

それでも運動を勧める理由:ホットフラッシュ以外への効果

ホットフラッシュを減らす目的では、運動の効果は確かめられていません。しかし、更年期の運動には、ほかの面での意義が複数あります。

  • 骨密度:閉経後の女性では、複数の種類の運動を組み合わせると、背骨の骨密度が数%高まることが示されています(更年期の骨密度の記事)
  • 筋肉量:荷重・レジスタンス運動により、除脂肪量の減少が抑えられる可能性があります(更年期の体型変化の記事)
  • 体重・体組成:食事と組み合わせると、体重や腹囲が減ります(更年期太りの記事)

眠りについては、運動以外の選択肢として、認知行動療法(CBT-I)が、ホットフラッシュの回数を変えなくても眠りを改善し、ほてりによる生活への支障を軽くしたという試験もあります(更年期と睡眠の記事)。「ほてりを減らす」ことと、「ほてりがあっても生活を楽にする」ことは、分けて考えることができます。

ほてりは、どのくらい続くのか

「いつまで続くのか」も、多くの方が知りたい点です。アメリカの更年期の大規模観察研究(SWAN)では、3,302人のうち、頻繁なほてり・寝汗(2週間に6日以上)があった1,449人を解析しています(Avis et al., 2015, JAMA Internal Medicine)。

頻繁な症状の総持続期間の中央値は、7.4年で、最終月経後も、中央値で4.5年続いていました。症状が最初に出た時期によって差があり、閉経前や移行期の早い時期に最初に頻繁な症状が出た女性で最も長く(総期間の中央値は11.8年超、最終月経後の持続は9.4年)、閉経後に初めて出た女性では最も短い(3.4年)結果でした。

持続が長くなる要因として、若い年齢、教育歴の低さ、ストレスや症状への敏感さ、うつ症状や不安の強さなどが挙げられています。著者らは、頻繁なほてりが7年以上続きうることを、前もって知らせることが大切だとしています。

つまり、ほてりは、数か月で終わる一時的な症状とは限らず、長い付き合いになる可能性があります。だからこそ、「我慢する」より、生活への支障が大きい場合は、早めに治療の選択肢を婦人科で相談する価値があります。

つらいときは、がまんしない

ほてりや発汗が、生活や睡眠に大きく影響している場合は、運動や生活習慣の見直しだけで何とかしようとせず、婦人科で相談することが勧められます。ホルモン療法をはじめ、症状に対する治療の選択肢があります。治療を受けるかどうかは、症状の強さ、既往歴、リスクなどを踏まえて、医師との相談で決めるものです。

無理なく続けるために

  • ホットフラッシュの改善だけを目的にせず、骨・筋肉・体重・気分といった幅広い面のために運動を続ける
  • 強い運動で体が熱くなりすぎる場合は、ウォーキングなど、無理のない強度から始める
  • ほてりが気になる時間帯・状況を記録し、医療機関で相談するときの材料にする
  • 睡眠や気分への影響が大きい場合は、早めに婦人科や専門家に相談する

まとめ:「ほてりを減らす」運動、ではなく「更年期を支える」運動

運動がホットフラッシュの回数を減らすことは、現時点では確かめられていません。重症度については、運動で多少和らぐ可能性が示されていますが、バイアスのリスクが高い研究を除くと、有意な差が見られなくなります。

一方で、運動は、骨密度や筋肉量、体組成といった、更年期に変化しやすい他の面を支える効果が期待できます。ほてりについては、運動だけで何とかしようとせず、つらさが強い場合は、治療の選択肢を含めて、婦人科で相談することが大切だと考えています。

あわせて、ほてりは、頻繁なものが中央値で7年以上続く可能性があること、臨床催眠のような非薬物療法で、ほてりの回数が減った試験もあることが、研究から示されています。運動で回数が減るとは確かめられていませんが、骨・筋肉・体組成を支える意味はあります。長期戦になりうる症状だからこそ、つらさが強い場合は、早めに婦人科で相談することが大切です。

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参考文献

  • Daley A, Stokes-Lampard H, Thomas A, et al. (2014). Exercise for vasomotor menopausal symptoms. Cochrane Database Syst Rev, 2014(11), CD006108. DOI: 10.1002/14651858.CD006108.pub4
  • Liu T, Chen S, Mielke GI, et al. (2022). Effects of exercise on vasomotor symptoms in menopausal women: a systematic review and meta-analysis. Climacteric, 25(6), 552-561. DOI: 10.1080/13697137.2022.2097865
  • Shepherd-Banigan M, Goldstein KM, Coeytaux RR, et al. (2017). Improving vasomotor symptoms; psychological symptoms; and health-related quality of life in peri- or post-menopausal women through yoga: An umbrella systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med, 34, 156-164. DOI: 10.1016/j.ctim.2017.08.011
  • Saensak S, Vutyavanich T, Somboonporn W, Srisurapanont M. (2014). Relaxation for perimenopausal and postmenopausal symptoms. Cochrane Database Syst Rev, 2014(7), CD008582. DOI: 10.1002/14651858.CD008582.pub2
  • Elkins GR, Fisher WI, Johnson AK, et al. (2013). Clinical hypnosis in the treatment of postmenopausal hot flashes: a randomized controlled trial. Menopause, 20(3), 291-298. DOI: 10.1097/gme.0b013e31826ce3ed
  • Avis NE, Crawford SL, Greendale G, et al. (2015). Duration of menopausal vasomotor symptoms over the menopause transition. JAMA Intern Med, 175(4), 531-539. DOI: 10.1001/jamainternmed.2014.8063

この記事を書いた人

りっぽうたい|柔道整復師・介護福祉士。東京で整骨院を開業し、姿勢・骨格の悩みを抱える多くの女性の施術に携わっています。身体の仕組みから見た姿勢・骨格・コンディショニングの情報を発信しています。プロフィールを見る

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