パソコン作業が続くと、目がしょぼしょぼして、気づくと首や肩もガチガチ。40代になってから、とくにそう感じるようになった方も多いのではないでしょうか。
「目の疲れが肩こりの原因」という説明をよく見かけますが、研究データではどこまで分かっているのかを整理します。
目の疲れと首・肩の不調は、一緒に語られやすい
画面を長時間見続けることで起こる目の疲れやかすみ、乾きは、まとめて「デジタルアイストレイン」や「コンピュータビジョン症候群」と呼ばれます。
コンピュータビジョン症候群(CVS)とは
パソコンやスマホなどの画面作業に伴って起こる、目の症状(疲れ、かすみ、乾き、ピントの合いにくさなど)を中心とした症状の総称です。研究では、専用の質問票(CVS-Q)でスコア化して評価することがあります。
老眼(老視)とは
加齢とともに、目のピントを合わせる力が低下し、近くが見えにくくなる状態です。多くの人が40代で自覚し始めます。2018年の系統的レビュー(Fricke et al., Ophthalmology)は、世界で2015年時点に約18億人が老眼だったと推定しています。
では、老眼世代の画面作業者では、目の疲れと首・肩の姿勢は、どう関係しているのでしょうか。
老眼世代の調査で見えた「首の姿勢」との関連
2020年にスペインで行われた横断研究(Sánchez-Brau et al., International Journal of Environmental Research and Public Health)は、累進レンズ(遠近両用など)を使う老眼世代のパソコン作業者109人(平均54歳)を調べました。
その結果、74.3%がコンピュータビジョン症候群の基準に該当していました。関連する要因として、女性(オッズ比3.40)、首が中立でない姿勢(同3.27)、職場の照明の問題(同3.64)が挙がっています。一方、画面作業の合計時間や、目と画面の距離は、有意な関連が見られませんでした。
首の姿勢の乱れは、調べた人の31.2%にみられ、もっとも多かったのは「首を後ろに反らせる」姿勢(20.2%)でした。著者らは、レンズの近くを見る度数が足りない場合、画面を見るために首を後ろに傾けてしまう可能性を指摘しています。
ただし、この研究は一時点の調査で、首や肩の痛みを測ったものではありません。「首の姿勢が崩れるから目が疲れる」のか、「目が疲れるから姿勢が崩れる」のか、あるいは両方なのかは、分からないままです。
メガネ(レンズ)を変えれば、首の痛みは減るのか
2017年のRCT(Cagnie et al., Environmental Health and Preventive Medicine)は、仕事に関連した首の不調のあるパソコン作業者35人を、パソコン作業用の累進レンズと、通常の累進レンズに分けました。
どちらのグループも、3か月後と6か月後に、目の疲れと首の痛みが、開始時より減っていました。レンズの種類による差は小さく、パソコン作業用レンズのグループは「作業に合っている」と答える人が多い、という違いが主でした。
両方のグループで改善していることから、新しい眼鏡に替えたこと自体や、時間の経過などの影響も考えられます(これは筆者の解釈です)。著者らは、レンズの種類よりも、使う人の作業内容や習慣に合わせて調整することが大切だとまとめています。
画面の位置と休憩:公的ガイドラインの目安
日本では、厚生労働省が「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年策定、2021年一部改正)を示しています。ガイドラインには、次のような目安が盛り込まれています。
- 目と画面の距離は、おおむね40cm以上を確保する。画面の上端は、目の高さとほぼ同じか、やや下にするのが望ましい
- 連続作業は1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10〜15分の作業休止を設ける
- 連続作業の途中に、1〜2回程度、1〜2分ほどの小休止を入れる
なお、これらは公的な「指針」であり、一つ一つの数字が個別の研究で検証されたものとは限りません。また、先ほどの調査では、目と画面の距離は目の疲れとの関連が見られませんでした。距離は一律に決めるより、自分の眼鏡で、首を無理に動かさずに見える位置を探すのが現実的です。

日常でできること
- 1時間に1回は画面から目を離し、遠くを見たり、席を立ったりする
- 画面の高さを見直し、首を後ろに反らさなくても見える位置に調整する
- 老眼を感じたら、眼科や眼鏡店で、普段の作業距離(パソコンの距離)を伝えて眼鏡を合わせる
- 照明が画面に映り込んでいないか、暗すぎないかを見直す
- 目の痛み、強い頭痛、視野の異常などがある場合は、肩こりと決めつけず眼科を受診する
まとめ
老眼世代のパソコン作業者では、目の疲れの症状がとても多く、首の姿勢の崩れとも関連していました。ただし、どちらが原因でどちらが結果なのかは、まだ分かっていません。レンズを変えるだけで首の痛みが大きく変わるとも言い切れず、目の使い方と姿勢を、セットで見直すことが現実的な対策です。休憩・画面の位置・合った眼鏡の3点を意識するところから始めてみてください。
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参考文献
- Sánchez-Brau M, Domenech-Amigot B, Brocal-Fernández F, Quesada-Rico JA, Seguí-Crespo M. Prevalence of Computer Vision Syndrome and Its Relationship with Ergonomic and Individual Factors in Presbyopic VDT Workers Using Progressive Addition Lenses. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(3):1003. DOI: 10.3390/ijerph17031003
- Cagnie B, De Meulemeester K, Saeys L, Danneels L, Vandenbulcke L, Castelein B. The impact of different lenses on visual and musculoskeletal complaints in VDU workers with work-related neck complaints: a randomized controlled trial. Environ Health Prev Med. 2017;22(1):8. DOI: 10.1186/s12199-017-0611-1
- Fricke TR, Tahhan N, Resnikoff S, et al. Global Prevalence of Presbyopia and Vision Impairment from Uncorrected Presbyopia: Systematic Review, Meta-analysis, and Modelling. Ophthalmology. 2018;125(10):1492-1499. DOI: 10.1016/j.ophtha.2018.04.013
- 厚生労働省. 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(令和元年7月12日付け基発0712第3号、令和3年12月1日一部改正). https://www.mhlw.go.jp/content/000658237.pdf(数値は、岡山産業保健総合支援センター「労働衛生コラムNo.13」の解説による: https://okayamas.johas.go.jp/column-no13/)
