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五十肩とは?肩が上がらなくなる原因を研究データから解説


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「腕が肩より上に上がらない」「夜、肩が痛くて眠れない」——40代・50代になって突然こうした症状が出て、驚いた経験はありませんか。俗に「五十肩」と呼ばれるこの症状について、医学的にはどう理解されているのか、研究データを整理します。

五十肩(肩関節周囲炎)とはどんな状態か

「五十肩」は通称であり、医学的には「肩関節周囲炎」や、より専門的には「凍結肩(adhesive capsulitis)」と呼ばれる状態です。肩関節を包む関節包という組織に炎症や線維化(硬くなること)が起こり、関節包が縮んで動きが制限されると考えられています。

アメリカの高齢者を対象にした調査では、65歳以上における1年間の発症率はおよそ0.35%と報告されており、女性の方が男性よりやや多く(比率にしておよそ1.8対1)、平均発症年齢は75.7歳とされています。ただし、これは高齢者に限定したデータであり、実際にはもっと若い40代・50代で発症するケースも広く知られています。

関節の中で何が起きているのか

五十肩の背景にある組織変化は、炎症と線維化という2つのプロセスが絡み合った現象だと考えられています。何らかのきっかけで関節包に炎症が起こると、免疫細胞から炎症性サイトカインや成長因子が放出され、これが線維芽細胞という細胞の働きを活性化させます。

線維芽細胞は本来、傷ついた組織を修復するためにコラーゲンを作る細胞ですが、この働きが過剰になると、関節包そのものが厚く・硬くなり、瘢痕組織のような「癒着」が形成されていきます。

この過程では、コラーゲンなどの組織を分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)と、それを抑制する物質のバランスも変化しており、組織の「作られる量」と「壊される量」のバランスが崩れることで、関節包が徐々に硬く縮んでいくと理解されています。あわせて、関節を滑らかに動かすための関節液の分泌も減少し、動きの制限をさらに悪化させると考えられています。

症状は3つの段階を経て進行する

五十肩の経過は、典型的には3つの段階に分けて説明されます。

① 炎症期(フリージング期)

強い痛みが特徴で、夜間に痛みが悪化しやすく、動きの制限も徐々に進んでいきます。この時期はおよそ2〜9ヶ月続くとされています。

② 拘縮期(フローズン期)

痛みのピークは過ぎるものの、関節包の硬さによる動きの制限が主な問題として残ります。この時期は4〜12ヶ月ほど続くとされます。

③ 回復期(サウイング期)

痛みが和らぎ、徐々に動きが戻っていきます。多くの場合は完全に近い回復に至るとされています。

段階によって症状の性質(痛みが主体か、硬さが主体か)が変わるため、それぞれの時期に応じたアプローチが必要だと考えられています。

発症に関わるとされる要因

五十肩の明確な原因は完全には解明されていませんが、糖尿病がもっとも一貫して指摘されているリスク要因です。1型糖尿病でオッズ比1.37、2型糖尿病でオッズ比1.22という関連が報告されており、糖尿病を持つ人では五十肩の有病率が10〜30%に達するという報告もあります。パーキンソン病との関連も指摘されています(オッズ比1.58)。

糖尿病がリスク要因とされる背景には、血糖値が高い状態が続くことで、コラーゲン線維の性質が変化し(終末糖化産物の蓄積など)、組織が硬くなりやすくなる仕組みが関わっている可能性が指摘されています。

かつては自然に治る一過性の症状と考えられていましたが、近年の研究では、長引く症状や完全には回復しないケースも少なくないことが指摘されています。

五十肩と間違えやすい他の肩の不調

肩が痛い・上がらないという症状は、五十肩以外にも、腱板(肩関節を安定させる筋肉の腱)の損傷や炎症、石灰沈着性腱炎など、複数の原因で起こりえます。

腱板の損傷では、特定の動作(腕を横から上げる動作など)で強い痛みが出る一方、可動域そのものは保たれていることが多いのに対し、五十肩ではあらゆる方向への動きが、自分で動かそうとしても他人に動かしてもらおうとしても制限される(他動可動域も制限される)という特徴があるとされ、この点が鑑別の目安の一つになります。

自己判断でこれらを区別するのは難しいため、症状が続く場合は、医療機関で画像検査などを含めた評価を受けることが推奨されます。

治療に関する研究データ

治療は、症状の段階や重症度に応じて個別に判断されるべきとされていますが、ステロイドの関節内注射、理学療法、関節腔内への水圧を利用した処置(ハイドロダイレーション)などが有効な選択肢として挙げられています。

ステロイド注射については、12週間の追跡で53.4%の患者に効果が確認されたとする報告があり、中程度の有効性があるとされています。

運動療法については、固有受容性神経筋促通法(PNF)と呼ばれるアプローチが、五十肩に伴う機能障害の改善に効果的だったとする報告もあります。いずれの治療法も、炎症期・拘縮期・回復期のどの段階にあるかによって、適切な強度や内容が異なると考えられており、自己判断で強く動かしすぎることは、かえって炎症を悪化させる可能性がある点にも注意が必要です。

五十肩、「そのうち治る」とは限らない
五十肩、「そのうち治る」とは限らない

痛みの経過に合わせた過ごし方

  • 肩が急に上がりにくくなった、夜間の痛みが強いといった場合は、早めに医療機関を受診する
  • 「そのうち自然に治る」と自己判断で放置しない
  • 糖尿病がある場合は、五十肩のリスクがやや高いことを念頭に置く
  • 症状の段階(炎症期・拘縮期・回復期)によって適切な対応が異なるため、自己流のストレッチより専門家の評価を優先する

施術での基本的な考え方

施術の現場では、炎症期は無理に動かさず、痛みが強く出ない、あるいは落ち着いてきてから運動療法に入るようにしています。特に意識しているのは、拘縮期(動きが硬くなる時期)をできるだけ短くすること、そして可動域をできる限り保つことです。痛みの経過に合わせて段階的に進めていくことを大切にしています。

まとめ:五十肩は”待つ”だけでなく”付き合う”視点も

五十肩(肩関節周囲炎)は、関節包の炎症と線維化が絡み合って進行する状態で、糖尿病などとの関連も指摘されている、決して珍しくない症状です。かつては自然に治ると考えられていましたが、近年の研究では長引くケースも少なくないことがわかっています。症状が出た場合は自己判断で様子を見るのではなく、早めに医療機関で段階に応じた対応を受けることが、回復への近道だと考えられます。

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参考文献

  • Sarasua SM, Floyd S, Bridges WC, Pill SG. The epidemiology and etiology of adhesive capsulitis in the U.S. Medicare population. BMC Musculoskeletal Disorders. 2021;22:828. DOI: 10.1186/s12891-021-04704-9
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