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たんぱく質を摂れば筋肉はつく?筋トレとの関係を研究データから解説


筋トレ,タンパク質,サルコペニア 身体の基本(生理学・栄養学)

「筋肉をつけたいなら、たんぱく質をたくさん摂ればいい」——そんなイメージを持っていませんか。

たんぱく質は筋肉を作るために欠かせない栄養素ですが、摂取量を増やすだけで筋肉や筋力が大きく増えるわけではありません。研究では、特にレジスタンス運動と組み合わせたときに、たんぱく質摂取による筋肉・筋力への効果が得られやすいことが示されています。

また、年齢を重ねるにつれて筋肉量や筋力を維持することが重要になる一方、「年齢を重ねたら、とにかくたんぱく質を増やせばいい」と考えるのも少し単純化しすぎています。

前回・前々回の記事では、インナーマッスルや基礎代謝を取り上げ、「身体の変化を一つの要因だけで説明することはできない」という視点から解説しました。

今回は、たんぱく質が筋肉や筋力にどのように関わるのか、どの程度の摂取量が研究で検討されているのか、そして姿勢を支える筋力との関係について、研究データをもとに整理します。

たんぱく質と筋肉の関係

筋肉は、主にたんぱく質でできています。

筋肉では、たんぱく質の合成と分解が常に行われています。運動などで筋肉に刺激が加わると、たんぱく質の合成が活発になり、その材料としてたんぱく質の摂取が必要になると考えられています。

つまり、たんぱく質は「筋肉の材料」ではありますが、材料をたくさん用意するだけでなく、運動によって筋肉を使う刺激が加わって初めて、その効果が発揮されやすいと考えられています。

なぜ加齢でたんぱく質の重要性が増すのか

加齢に伴って筋肉量や筋力、身体機能が低下していく現象の一つが「サルコペニア」です。

加齢だけでなく、身体活動量や栄養状態、疾患など複数の要因が関係すると考えられています(厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。

同じ資料では、筋肉(筋力)は40歳頃から少しずつ減少し、70歳を超えた頃から自覚症状が出やすくなるとされています。

特に高齢になると、筋肉への刺激が少ない状態では筋肉を維持しにくくなるため、運動と栄養の両方を意識することが重要になると考えられます。

日本の公的な栄養情報では、サルコペニアの発症予防の観点から、適正体重1kgあたり1日1.0g以上のたんぱく質摂取が有効な可能性があるとされています(厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。

ただし、これは一般的な目安であり、必要なたんぱく質量は年齢、体重、活動量、健康状態(腎機能など)によって異なります。「高齢だから、とにかく多く摂ればよい」というものではなく、自分の状態に合った量を意識することが大切です。

「たんぱく質だけ摂っても筋力は上がらない」という研究結果

「たんぱく質をしっかり摂れば筋肉がつく」というイメージを持っている方は多いと思います。しかし近年の研究では、この考え方にも注意が必要であることが示されています。

運動をともなわない場合の効果は限定的

2022年に発表されたシステマティックレビューでは、すでに一定の栄養状態にある健康な成人を対象に、たんぱく質摂取量を増やすことの効果が検討されました(Nunes et al., 2022)。

この研究では、レジスタンス運動(筋力トレーニング)を行っていない場合、たんぱく質摂取量を増やすだけでは、筋肉量や筋力への効果は明確ではなかったと報告されています。

つまり、すでに食事から一定のたんぱく質を摂れている健康な人が、運動をせずにたんぱく質だけをさらに増やしても、効果は限定的である可能性があるということです。

運動と組み合わせた場合の効果

別の用量反応メタ解析では、筋力の増加は、レジスタンス運動を行った場合にのみ有意に増強され、運動を行わない場合には増強されなかったと報告されています(Tagawa et al., 2022)。

同じ研究では、レジスタンス運動を行う人において、たんぱく質摂取量が増えることで筋力向上の効果が高まる傾向がみられ、その効果はおよそ体重1kgあたり1.5g/日前後で頭打ちになる可能性が示されています。

「摂れば摂るほど筋力が上がり続ける」という意味ではなく、ある水準を超えると追加の効果が見えにくくなる、という研究結果として捉えていただくのがよいと考えています。

摂りすぎても効果が頭打ちになる可能性

2018年に発表されたメタ解析では、レジスタンス運動を行っている場合でも、たんぱく質摂取量がおよそ1.6g/kg/日を超えると、それ以上の筋量増加効果は明確ではなかったと報告されています(Morton et al., 2018)。

これは「1.6g/kg/日まで必ず摂るべき」という意味ではありません。運動量や現在の摂取量によって必要量は異なり、あくまで研究上、追加的な効果が明確ではなくなった水準の目安として捉える必要があります。

このことから、「たんぱく質はとにかく多く摂ればよい」というものでもなく、運動量や体格に応じた適量を意識することが大切だと考えられます。

姿勢を支える筋肉は、特別な筋肉ではない

姿勢を保つための筋肉というと、腹横筋や多裂筋などの「インナーマッスル」をイメージする方も多いかもしれません。

しかし、立つ・歩く・座るといった日常動作では、背中、お腹、お尻、太ももなど、身体のさまざまな筋肉が協調して働いています。

そのため、姿勢の維持を考える場合も、「特定の筋肉だけを鍛える」というより、身体全体を動かす機会を保ち、必要な筋力を維持することが重要だと考えられます。

サルコペニアが進行しやすい抗重力筋(背中・お腹・お尻・太ももの筋肉など)が衰えると、姿勢を保ちにくくなったり、日常の動作が億劫になったりすることがあると言われています。

「たんぱく質を摂れば姿勢が良くなる」わけではない

ここまでの内容を踏まえると、たんぱく質と姿勢の関係は、次のように整理できます。

たんぱく質は、筋肉の維持・合成に必要な栄養素です。そして筋肉量や筋力は、姿勢を保つための一つの要素です。

ただし、「たんぱく質を摂る→姿勢が良くなる」という単純な一本道ではありません。たんぱく質だけを増やしても、運動を伴わなければ筋肉・筋力への効果は限定的であり、姿勢は筋力以外にも、骨盤や胸椎の動き、日々の身体の使い方など、複数の要素が関わって作られています(前回・前々回の記事参照)。

つまり、「たんぱく質を摂れば姿勢が良くなる」わけではなく、たんぱく質を材料として、日常的に姿勢を支える筋肉を使う機会を保つことが、姿勢の維持につながっていくと考えられます。

日常でできること

たんぱく質を摂るだけでなく、身体を動かす機会と組み合わせることを意識していただくことをおすすめします。

  • 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など、たんぱく質源となる食品を各食事で意識する
  • 歩く、階段を使うなど、日常的に身体を動かす機会を増やす
  • 無理のない範囲でレジスタンス運動(筋力トレーニング)を取り入れる
  • たんぱく質だけに偏らず、主食・副菜も含めたバランスの良い食事を意識する
  • 極端な食事制限を避ける

たんぱく質摂取と運動、どちらか一方だけでなく、両方を無理のない範囲で継続していくことが、姿勢を支える筋力を保つうえで大切だと考えています。

まとめ

たんぱく質は筋肉の材料ですが、摂取するだけで筋力が劇的に上がるわけではありません。

研究データからは、レジスタンス運動と組み合わせて初めて、たんぱく質摂取の効果が発揮されやすいことが示されています。

姿勢を支える筋肉も同様に、たんぱく質だけで維持されるものではなく、運動を含めた日々の身体の使い方によって保たれていると考えられます。

次回は、姿勢と睡眠の関係について解説していきます。

参考文献

Nunes EA, Colenso-Semple L, McKellar SR, et al. Systematic review and meta-analysis of protein intake to support muscle mass and function in healthy adults. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022;13(2):795-810. DOI: 10.1002/jcsm.12922

Tagawa R, Watanabe D, Ito K, et al. Synergistic effect of increased total protein intake and strength training on muscle strength: a dose-response meta-analysis of randomized controlled trials. Sports Med Open. 2022;8(1):110. DOI: 10.1186/s40798-022-00508-w

Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52(6):376-384. DOI: 10.1136/bjsports-2017-097608

厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/exercise/ys-087.html

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