「水をたくさん飲むと痩せる」「こまめに水分を摂るとむくみが取れる」——そんな話を耳にしたことはありませんか。
このブログでは、「よく聞く健康情報を、実際の研究データから検証する」ことを大切にしています。水分摂取についても、最近になって、複数のランダム化比較試験(RCT)を統合した質の高いレビューが相次いで発表され、「どの効果が確認されていて、どの効果がまだ十分に証明されていないか」が、以前よりも整理されつつあります。
先に結論を言うと、水分摂取に関する効果は「オールオアナッシング」ではありません。研究によって明確な根拠があるものと、まだ判断できないものが、はっきり分かれています。
この記事では、水分摂取が身体に与える効果について、研究データをもとに一つずつ整理していきます。
水分と身体の関係
私たちの身体の多くは水分で構成されており、水は代謝を含む生命活動に欠かせない栄養素の一つとされています。
一般的な目安として、成人の1日あたりの総水分摂取量は、男性でおよそ13カップ(8オンス換算)、女性でおよそ9カップとされることがあります。ここでいう「総水分摂取量」とは、飲み物として摂る水分だけでなく、食事に含まれる水分も合わせた量を指しており、飲み水だけでこの量を摂る必要があるわけではありません。また、これはあくまで目安であり、体格や活動量、気候などによって必要な量は変わると考えられています。
「1日に水を2リットル飲むべき」という言葉もよく聞かれますが、この数字を裏付ける明確な科学的根拠は、実ははっきりしていないとされています。
水分が不足するとどうなるのか
一方で、「水分をたくさん摂ることの効果」がはっきりしない分野が多いからといって、水分摂取そのものが重要でないわけではありません。
発汗や排泄などで失われた水分が十分に補われないと、のどの渇きを感じたり、集中力の低下や倦怠感につながったりすることがあると言われています。運動時や暑い季節、発熱時などは、通常よりも多くの水分が失われるため、意識的に補う必要があると考えられています。
つまり、「水を余分に飲むことに追加のメリットがあるか」という問いと、「必要な水分が不足しないようにする」という基本的な話は、分けて考える必要があります。
水を飲むことで確認されている効果・されていない効果
2024年に発表された、18件のランダム化比較試験を統合したシステマティックレビューでは、水分摂取量を増やすことの効果について、幅広く検討されました(Hakam et al., 2024)。
この研究では、効果が統計的に確認されたものと、そうでないものが、はっきりと区別されています。下の表に、主な項目についての研究結果をまとめました。
| 項目 | 研究結果 |
|---|---|
| 体重管理(水分摂取量を単純に増やす) | 研究によって結果が分かれている |
| 加糖飲料を水に置き換える | 体重減少との関連が報告されている |
| 腎結石(尿路結石)の再発予防 | 比較的しっかりした根拠がある |
| 片頭痛の予防 | 質の高い研究が不足しており、判断できない |
| 尿路感染症の予防 | 質の高い研究が不足しており、判断できない |
| 糖尿病のコントロール | 質の高い研究が不足しており、判断できない |
| 低血圧の症状 | 質の高い研究が不足しており、判断できない |
体重管理への効果
このレビューでは、水分摂取量を増やす介入によって、体重減少の効果が統計的に有意にみられたと報告されています。
ただし、2024年に発表された別のメタ解析(肥満・過体重の成人を対象にした8件のRCT)では、水分摂取量を単純に増やすだけでは、体重・BMI・ウエスト周囲径に明確な変化はみられなかったとされています(Chen et al., 2024)。
この2つの研究の違いについては、後ほど詳しく触れます。
腎結石の予防効果
水分摂取量を増やすことで、腎結石(尿路結石)の再発を予防する効果については、比較的しっかりとした根拠があるとされています。
5年間にわたるランダム化比較試験では、水分摂取量を増やして尿量を1日2リットル以上に保つよう指導されたグループでは、結石の再発率が12%だったのに対し、通常の水分摂取を続けたグループでは27%だったと報告されています(Borghi et al., 1996)。
この結果を踏まえ、現在の欧米の泌尿器科の診療ガイドラインでは、結石の再発予防のために1日2.5リットル以上の水分摂取を目安として推奨しています。ただし、これは研究結果をもとにした目安であり、すべての人に当てはまる決まった数字というわけではありません。
根拠がまだ十分ではない効果
一方、片頭痛の予防、尿路感染症、糖尿病のコントロール、低血圧などについては、研究そのものが少なく、質の高いデータが十分に蓄積されていないため、「効果がない」のか「まだ判断できない」のかを区別することも難しい状況です(Hakam et al., 2024)。
つまり、「水を飲めばこれらの症状が改善する」とも「改善しない」とも、どちらも言い切れる段階には、まだ達していないと考えられます。
「何を置き換えるか」が重要かもしれない
先ほどの体重管理に関する2つの研究の違いを考えるうえで、興味深いヒントがあります。
Chen et al.(2024)の研究では、水分摂取量を単純に増やすだけでは体重への効果ははっきりしなかった一方、加糖飲料(砂糖の入った飲み物)を水に置き換えた場合には、有意な体重減少がみられたと報告されています。
つまり、「水を追加して飲む」ことよりも、「普段飲んでいる加糖飲料を水に置き換える」ことの方が、体重管理という点では意味を持つ可能性があります。
これは、水そのものの効果というよりも、置き換えによって砂糖の摂取量が減ることが影響していると考えられます。
「むくみ」との関係については
「水を飲むとむくみが取れる」と言われることもありますが、これについては、今回取り上げた大規模なレビューの中でも、直接的な検討対象にはなっていません。
むくみ(浮腫)は、水分摂取量だけでなく、塩分摂取量、血流、リンパの流れ、長時間同じ姿勢を続けることなど、複数の要因が関わって起こると考えられています。
水分摂取が不足すると身体が水分を溜め込みやすくなる可能性を指摘する説もありますが、これを検証した質の高い研究は限られており、現時点では明確な結論を出すことはできません。
そのため、「むくみが気になるから水をたくさん飲む」という対策だけに頼るのではなく、塩分の摂り過ぎを控えたり、長時間同じ姿勢を避けたりといった、複数の側面から見ていただく方がよいと考えられます。
日常でできること
- 喉の渇きを感じたら我慢せず、こまめに水分を摂る
- 甘い飲み物を習慣的に飲んでいる場合は、水や無糖のお茶に置き換えることを検討する
- 運動時や暑い季節は、発汗量に応じて水分摂取量を増やす
- 「1日2リットル」など特定の数字にこだわりすぎず、自分の体調や活動量に合わせて調整する
- むくみが気になる場合は、水分だけでなく塩分摂取量や姿勢も見直してみる
- 持病があり水分摂取量に制限がある場合は、自己判断せず医療機関の指示に従う
まとめ
水分摂取による健康効果については、研究によって「はっきり分かっていること」と「まだ十分に分かっていないこと」が、明確に分かれています。
体重管理や腎結石の予防のように一定の根拠が示されている効果もありますが、それは「水を飲めば飲むほど良い」という単純な話ではなく、「何を置き換えるか」や「もともとの水分摂取状況」によって結果が変わる可能性があります。
一方、片頭痛予防やむくみとの関係など、多くの通説については、それを裏付ける質の高い研究がまだ十分ではなく、「効果がない」と「まだ分からない」を区別して捉える必要があります。
これまでの記事でもお伝えしてきたように、「一つの習慣を変えれば劇的に改善する」というよりも、分かっていることと分かっていないことを見極めながら、日々の生活習慣全体を見直すことが大切だと考えられます。
次回は、更年期による体型変化について解説していきます。
参考文献
Hakam N, Guzman Fuentes JL, Nabavizadeh B, Sudhakar A, Li KD, Nicholas C, Lui J, Tahir P, Jones CP, Bent S, Breyer BN. Outcomes in Randomized Clinical Trials Testing Changes in Daily Water Intake: A Systematic Review. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2447621. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.47621
Chen QY, Khil J, Keum N. Water Intake and Adiposity Outcomes among Overweight and Obese Individuals: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Nutrients. 2024;16(7):963. DOI: 10.3390/nu16070963
Borghi L, Meschi T, Amato F, Briganti A, Novarini A, Giannini A. Urinary volume, water and recurrences in idiopathic calcium nephrolithiasis: a 5-year randomized prospective study. J Urol. 1996;155(3):839-843.
