「更年期になるとお腹まわりに脂肪がつきやすくなる」——そんな話を聞いたことはありませんか。
これまでの記事でお伝えしてきたように、更年期に関する体の変化は、単純に「加齢のせい」と片付けられるものではなく、研究で確認すると特有のパターンがあることが分かってきています。
体型の変化についても、実は「体重そのもの」より「脂肪のつき方」に注目すると、更年期特有の変化が見えてきます。
この記事では、更年期における体組成(脂肪・筋肉の量やつき方)の変化について、研究データをもとに整理します。
体重よりも「体組成」に注目する
体重計に乗ったときの数字だけでは、身体の中で何が起こっているかを十分に捉えられないことがあります。
なぜなら、体重は「脂肪の量」と「筋肉(除脂肪組織)の量」を合わせたものであり、脂肪が増えて筋肉が減っても、体重自体はそれほど変わらない場合があるからです。
このため、更年期の体型変化を理解するには、体重だけでなく、身体の中の脂肪や筋肉の量・つき方(体組成)を見る必要があると考えられています。
更年期にかけて実際に何が変化するのか
アメリカの大規模な縦断研究(SWAN研究)では、閉経前後にわたって体組成の変化が詳しく追跡されています。
いつから体組成の変化が加速するのか
2019年に発表された研究では、最終月経(FMP)のおよそ2年前から、体脂肪量の増加と筋肉量(除脂肪量)の減少が加速し始めると報告されています(Greendale et al., 2019)。
この加速した変化は、閉経後しばらくすると再び緩やかになるとされています。つまり、前回の記事でお伝えした骨密度の変化と同様に、体組成の変化にも「急速に進む期間」があり、その期間には限りがあると考えられます。
脂肪の「量」より「つき方」が変わる
2021年に発表された、同じSWAN研究のグループによる報告では、更年期の前後で、脂肪の総量だけでなく、脂肪がつく場所(分布)にも変化がみられるとされています(Greendale et al., 2021)。
具体的には、皮下脂肪よりも、お腹の内臓まわりにつく「内臓脂肪」の割合が増える傾向があると報告されています。ある報告では、内臓脂肪が体脂肪全体に占める割合が、更年期前のおよそ5〜8%から、更年期後にはおよそ15〜20%まで増加したとされています(Kodoth et al., 2022)。
同じ報告では、閉経後の女性は、閉経前の女性と比べて体幹部の脂肪が約36%、腹部内臓脂肪の面積が約49%多かった一方、腕や脚の脂肪量には大きな差がみられなかったとされています。
つまり、「脂肪の総量」よりも、「お腹まわりに脂肪がつきやすくなる」という分布の変化が、更年期の体型変化の特徴のひとつだと考えられます。
筋肉量の減少も並行して起こる
前述のGreendale et al.(2019)の研究では、脂肪量の増加と同時に、筋肉量(除脂肪量)の減少も進むとされています。
これは、これまでの記事でお伝えしてきた、加齢に伴う筋肉量の低下(サルコペニア)やたんぱく質の重要性とも関係していると考えられます。
「体重が変わらないのに体型が変わる」のはなぜか
ここまでの内容を踏まえると、「体重計の数字は大きく変わっていないのに、なんとなく体型が変わった気がする」という感覚には、根拠があると考えられます。
脂肪が増え、筋肉が減ることで、体重の合計はそれほど変わらなくても、身体の中の脂肪と筋肉の割合(体組成)や、脂肪のつき方は変化している可能性があるからです。
そのため、体型の変化を「体重の増減」だけで判断しようとすると、実際に起きている変化を見誤ることがあるかもしれません。

脂肪が増えるのは、「食べる量が増えた」からではない
更年期に脂肪が増える理由を、食事・活動量・エネルギー消費の面から追跡した研究があります。閉経前の健康な女性156人(白人103人・黒人53人)を4年間追跡し、体脂肪をX線で、お腹の内臓脂肪と皮下脂肪をCTで測定したものです(Lovejoy et al., 2008, International Journal of Obesity)。
結果は明確でした。体脂肪と体重が有意に増えたのは、4年間のあいだに閉経を迎えた51人だけでした。お腹の皮下脂肪は閉経の有無にかかわらず全員で増えていましたが、内臓脂肪が有意に増えたのは、閉経した女性だけでした。
その背景として、エネルギーを使う側の変化が見られました。身体活動量は、閉経のおよそ2年前から有意に低下し、その後も低いままでした。睡眠中のエネルギー消費の低下は、閉経した女性では閉経していない女性の約1.5倍の大きさで(-7.9%対-5.3%)、脂肪を燃やす働き(脂肪酸化)も、閉経した女性では32%低下していました。
一方、食事のエネルギー・たんぱく質・炭水化物・食物繊維の摂取量は、閉経の3〜4年前のほうが、閉経の時点より多くなっていました。つまり、「更年期になって食べる量が増えたから太る」というより、活動量とエネルギー消費が下がるなかで、それまでと同じ生活を続けていると脂肪がつきやすくなる、という構図です。なお、エネルギー消費を部屋型の測定装置で調べたのは34人に限られる点は、割り引いて考える必要があります。
ホルモン補充療法は、体型に影響するのか
国際閉経学会がまとめたレビュー(Davis et al., 2012, Climacteric)によると、体重が増えること自体を閉経移行期だけのせいにはできませんが、閉経にともなうホルモン環境の変化は、体脂肪の総量と腹部脂肪の増加に関連しているとされています。
動物とヒトの研究から、腹部に脂肪がたまりやすくなる傾向は、エストロゲン療法で和らぐことが示されています。多くの研究で、エストロゲン療法や、エストロゲンと黄体ホルモンの併用療法は、全体の脂肪量を減らし、インスリンの効きやすさを改善し、2型糖尿病の発症率を下げる方向の結果でした。
ただし、著者らは、どのような女性が代謝面での恩恵を受けやすいのかを特定する研究がさらに必要だとしています。ホルモン補充療法は、体型を目的に選ぶ治療ではなく、更年期症状、病歴、リスクなどを踏まえて医師が判断するものです。体型の変化が気になる場合も、まず運動や生活習慣を見直したうえで、必要があれば婦人科で相談する、という順番が現実的です。
運動で、筋肉量の減少は抑えられるのか
筋肉量の減少に対して、運動がどこまで効くのかを調べた試験があります(Flores et al., 2022, JCSM Rapid Communications)。閉経後で骨量がやや少なめの女性276人(平均54.5歳)を、骨粗しょう症の薬(リセドロネート)を飲む群、荷重・レジスタンス運動を行う群、対照群に、1年間ランダムに割り付けて、除脂肪量(筋肉などの量)の変化を比べたものです。
1年後の除脂肪量は、対照群で0.15kg減ったのに対し、運動群では0.43kg、薬の群では0.31kg増えていました。運動群・薬の群とも、対照群より有意に多い結果で、閉経後の筋肉量の減少を運動によって抑えられる可能性が示されています。
注意したいのは、運動の実施率(参加した割合)が12か月で64%にとどまり、薬の服用率の89%より低かった点です。効果が期待できても、続けること自体が難しいという現実がうかがえます。この結果は、もともとは別の目的で行われた試験の二次解析である点も、割り引いて考える必要があります。
体組成を意識した過ごし方
- 体重の増減だけで判断しない
→ウエスト、体脂肪率、筋肉量などを組合わせる - 筋肉量の維持を意識
→ウォーキングだけでなく、レジスタンス運動を取り入れる - たんぱく質を含めたバランスの良い食事を意識する
→ビタミン、ミネラル、食物繊維などのバランスにも注意 - 日常活動量を落とさない
→座りっぱなしの時間を減らす、階段を使う
まとめ:体重だけでは見えない変化がある
更年期の体型変化は、単に「太りやすくなる」というだけでなく、脂肪のつき方(分布)や、脂肪と筋肉の割合そのものが変化することによって起こると考えられています。
この変化は、最終月経の前後で加速し、その後は落ち着いていくとされており、骨密度の変化と同じように、時期による変化のペースの違いがあると考えられます。
これまでシリーズを通してお伝えしてきたように、身体の変化は一つの要因だけで説明できるものではなく、栄養・運動・ホルモンなど、複数の要素が関わり合っています。日々の小さな習慣の積み重ねが、長期的な身体の変化に向き合ううえで大切だと考えています。
あわせて、閉経の前後には活動量や睡眠中のエネルギー消費も下がりやすく、「食べる量が増えたから」だけでは説明できないこと、そして荷重・レジスタンス運動が筋肉量の減少を抑える可能性があることも、研究から示されています。体型の変化は「年齢のせい」と片付けず、活動量や筋肉への働きかけを、できる範囲で取り入れてみるのがよさそうです。
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参考文献
Greendale GA, Sternfeld B, Huang M, Han W, Karvonen-Gutierrez C, Ruppert K, Cauley JA, Finkelstein JS, Jiang SF, Karlamangla AS. Changes in body composition and weight during the menopause transition. JCI Insight. 2019;4(5):e124865. DOI: 10.1172/jci.insight.124865
Greendale GA, Han W, Finkelstein JS, Burnett-Bowie SM, Huang M, Martin D, Karlamangla AS. Changes in Regional Fat Distribution and Anthropometric Measures Across the Menopause Transition. J Clin Endocrinol Metab. 2021;106(9):2520-2534. DOI: 10.1210/clinem/dgab389
Kodoth V, Scaccia S, Aggarwal B. Adverse Changes in Body Composition During the Menopausal Transition and Relation to Cardiovascular Risk: A Contemporary Review. Womens Health Rep (New Rochelle). 2022;3(1):573-592. DOI: 10.1089/whr.2021.0119
Lovejoy JC, Champagne CM, de Jonge L, Xie H, Smith SR. Increased visceral fat and decreased energy expenditure during the menopausal transition. Int J Obes (Lond). 2008;32(6):949-958. DOI: 10.1038/ijo.2008.25
Davis SR, Castelo-Branco C, Chedraui P, et al. Understanding weight gain at menopause. Climacteric. 2012;15(5):419-429. DOI: 10.3109/13697137.2012.707385
Flores LE, Kupzyk K, Waltman N, Beavers KM, Bilek L. Risedronate or Exercise for Lean Mass Preservation During Menopause: Secondary Analysis of a Randomized Controlled Trial. JCSM Rapid Commun. 2022;5(2):154-161. DOI: 10.1002/rco2.59

